2001 第16回テーザー全日本選手権
場所: 和歌山マリーナシティ  レポート: 稲毛フリート 田中郁也

1.プロローグ
 10月20、21日、和歌山マリーナシティにおいて、テーザー全日本選手権が開催された。千葉稲毛、葉山、野比、浜名湖、琵琶湖、大阪北港、芦屋の各フリートから総勢36艇の参加があった。
 関西地区での開催は97年の芦屋以来4年ぶりということもあって、関西勢の意気込みには目を見張るものがあった。浜名湖でのワールド以来急成長を遂げている大阪北港フリートからは9艇が参加。和歌山出身で売出し中の若手チーム、河野−-赤松組は、1ヶ月前から愛艇をマリーナシティに移し、毎週末練習に励んでいたとのこと。芦屋からは前回準優勝、タイトルの奪取をねらう堤−荻原組、レディスヘルムの田上、竹原、松井組、播島ペアなど5チームが参加。
 一方関東からは、8月のイギリスワールドで4位入賞、ジュニアクルーのタイトルも手にし、全日本連覇を狙う本吉親子、前回3位の石井・小松組といった実力者をはじめ、スーパーグランドマスター(クルーの合計年齢120歳以上)の安原・戸田組、大成建設、ソニーチームを擁する葉山勢が最多の12艇。どこでもキャンプをはってしまう野比勢が3艇、稲毛からは何かと話題の多い山床夫妻組をはじめ3艇と、合計18艇が参加。野比勢、本吉組は前日に海面のチェックを行なうなど気合が入っていた。しかし、多くのチームは名阪自動車道の夜間通行止め、リフレッシュ工事の渋滞にはまり苦労しながら現地にたどり着いた。

2.10月20日(土)第1、第2レース
 初日、ハルウェイト、体重等の計測、艇長会議を終えて各艇海上へ。北東からの陸風で4〜5メートル程度のブローが時折入り、おもしろそうなレースを予感させた。テーザーの一般的なコースは、フリーのレグを長めにとれる正三角形のトライアングル・コースのあと、ソーセージ・コースを走る。コンディションが良ければこれにもう1回トライアングルが追加される。
 10時半、第1レースのスタート、しかしゼネリコを繰り返す。そうこうするうちに風が弱まり、海面にもムラが目立ちはじめた。風の吹き出しは北より、東よりのものと幾筋かあり、そのレグで支配的な風を先に拾った艇がフリートをリードした。最初のレグでは、北よりのブローが中心に入り、左海面に展開した艇団が先行した。その後は風がさらに弱まる中で、丹念にブローを拾っていく必要があった。トップは稲毛の田中組、2位には浜名湖ワールド以来、大の親日家となったオランダのコンスタンチン・ウドさんと秋田の現場から駆けつけた大成建設所属熊田選手の即席ペア、3位には本吉組、4位にはデラマンチャヨットクラブの石井−小松組、5位には同じく山本−宮下組が入った。最終グループがフィニッシュラインに近づいたころには、ほとんど無風となり、2艇タイムリミットに引っかかった。全レース完走を目標に参加したという琵琶湖の長野チームが大変残念がっていたのは印象的だった。
 かなりの風待ちのあと、北西の風が岬まわりで入ってきた。「これでレースができる!」、このブローを一番喜んだのは、大会の準備に中心的な役割を果たしてきたテーザー協会イベント委員の堤選手であった。
 スタートが近づくと岬を越えて入ってくる風も入り、本部船有利のスタートラインとなった。第1レースと同様にゼネリコが続き、ついに黒旗ルールの適用。スタート時には5メートル程度のいい風。第1レグは、マークが左よりにセットされたこともあり、近づくにつれ岬まわりの左からのブローがよく入り、左海面に展開した艇団がリードした。残念なことにフリーのレグを走っている間にまたも風が落ちはじめた。2本目の上りは岬越えの弱いブローを先に拾った艇が先行した。次のランニングでコース短縮。田中艇が連続トップ。2位堤−荻原チーム、3位は本吉親子チーム。4位には大阪北港の河野−赤松チームが、5位にはレディスヘルムの田上−松井チームが入る健闘をみせた。

3.アフターレース
 レース終了後、日本テーザー協会の総会とレセプションが開催された。総会では、今年度の活動報告、会計報告等定例の議題に加え、8月のイギリス・ワールドの際に開催されたワールドカウンシル(世界評議会)での議事が報告され、ハルウェイトのルールを2kg引き下げることの投票を行うこと、クルーウェイトのルール(乗員の合計体重が130kgを下回る場合には不足分のバラストの搭載を義務づけ)に対する各国の意見のとりまとめを日本から要請したこと等が報告された。また、2008年(又は09年)オランダでのワールドを、日本との順番を入れ替えて2年先行開催することについての意見交換が行われた。
 最後に、これまで2年間、協会を支えてきた安澤会長をはじめとする理事が任期満了で退任するため、次期会長の選出が行われ、本吉譲治氏が選出された。
 堅苦しい話の後は場所を「黒潮市場」のバーベキューコーナーに移して、盛大なパーティーが開催された。新鮮な海の幸を自分たちで味付けしながら頂くのは、楽しくそしておいしかった。大阪北港の今井さんの進行により、フリート紹介が順次行われ、最後に運営の和歌山県セーリング連盟の皆さんへの感謝を全員で伝え、散会となった。
 
4.10月22日(日)第3、第4、第5レース
 前日の未消化分、第3レースも含め残り4レースを実施すべく、スタート時刻を9時に繰り上げたが、気圧の谷の接近で天気は下り坂、風は弱かった。しかし、選手の気持ちが通じたのか、弱いながらも北東の風が吹き出した。第3レースは途中風が落ちたことから、2回目の下マークでコース短縮となった。田中チームは3連続トップ。2位堤−荻原チーム、3位UDO−熊田チーム。第4レースは本部船よりから出た艇団が東よりのブローをつかみトップグループを形成した。このシリーズ、はじめてフルでコースを走り、UDO-熊田チームがトップフィニッシュ、2位は3連続となる堤−荻原チーム、3位には大阪北港の池田−秋吉組、4位には久々にレースに復帰した村山夫妻チームが入った。
 第5レースの実施はカットレースが発生することから総合順位に大きな影響を及ぼすことが予想された。選手がそれぞれに様々な思いを巡らせる中でスタートの時を迎えた。この時点の1位田中艇と2位堤艇の差は3点、堤艇はトップ取りを強く意識した気合いの入ったスタートを切った。スタート間際に左からのブローが入り、風がかなり下にシフト。これを予想したのか堤艇はポートスタートの構え。 しかし、ルームが厳しいと判断すると下1に位置していた本吉艇を下に受けて、ぎりぎりのスタートを決めた。スタート直後に頭を出すとあとは独走に近い状態となった。このレースはシフトに反応して下から出た艇が先行した。2レグ以降は東よりのブローを活かし、右に展開する艇が多かった。2位には本吉チーム、3位田中チーム、4位には河野−赤松組、5位には大阪北港の荒岡−玉置チームが入った。

5.レース結果
 総合優勝は5年ぶり4回目の優勝となる田中チーム。わずか1点差に迫った堤−荻原組は残念ながら昨年に続いての2位。3位UDO−熊田組、4位本吉チーム、5位河野−赤松組という結果となった。
テーザーの幅広い選手層を象徴するマスタークラス(80〜99歳)優勝は池田俊則−秋吉寿美子組、2年連続であり、来年もとるとの宣言が頼もしかった。グランドマスター(100〜119歳)優勝は大阪北港の多田幸男−入村じゅんこ組、今回から新設されたスーパーグランドマスターは(120歳以上)葉山の安原実郎−戸田隆久組、レディスヘルムは芦屋の田上洋子−竹原桃代−松井晋一組がそれぞれタイトルを手にした。

6.感謝
 きれいな海、快適なハーバー、おいしい海の幸と大変恵まれた大会であり、とても楽しい時間を過ごすことができた。テーザーのフリートのない和歌山で、はじめて全日本選手権が開催できたことは、和歌山県セーリング連盟と和歌山マリーナの全面的なご協力によるものであった。この場を借りてレース委員長の山中さん、プロテスト委員長の松村さんをはじめとする連盟の関係者に対し深く感謝したい。